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第44話

元日、雪人は真人と純と三人で新年を迎えた。 純の母は身体が弱く空気の綺麗な地方で生活していると聞いている。 最後に純の母を見たのはいつだったか。 雪人は思い出せなかったが、子供心にも美しい人だったように思う。 正月の挨拶を済ませ、お節料理をつまむ。 もともと食の細い雪人は文字通り豪華な料理を小鳥が啄むように箸を付けた。 「雪人、コレ美味しい。食べてごらん」 「うん」 純が気に入った料理を雪人に勧めても雪人は返事だけしてなかなか口にしない。 「もう、いい。ごちそうさま」 すぐに食事を終えて時間を持て余した。 何でもない内容の話をしながら真人と純はまだ食事をしていた。 雪人は客観的に思う。 …自分は普通ではない。 ‥‥血が近いとはいえ他の家族の中に紛れ込んでいる。 今までと同じ生活をしているのに、急にそんな風に思えてしまった。 「雪人、風邪ひくよ」 雪人は一日する事もなく、気に入っている本を読み耽って過ごした。 「さっき伯父さんが見えてね…」 純が言い淀みながら雪人を見る。 「明後日、三日は帰って来なさいって」 雪人の体が硬直するのを純は感じた。 恐らく、また、梨花が来る。 そっと雪人の肩に触れ、純のはその体を引き寄せた。 早く、雪人に見せつけなければ。 純の目はどこか遠くを見据えていた。

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