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第53話
雪人が目を覚ましたのはもう日差しが傾き掛けた午後だった。
乱れたシーツに純の温もりは無く、一人残された事にがっかりしている自分がいた。
それでも室内が寒くないのは純が雪人を気遣って空調のスイッチを入れてくれたからだ。
雪人は裸のまま、そっと床に足を下ろした。
「あっ!」
立ち上がろうとすると足に力が入らず床にペタンと座り込み、昨日の情事の激しさを思い出して赤面した。
「僕…純と…」
裸の身体を抱き締めて細部まで思い出そうとしたのだが…ただ快感に身を任せていたからか“気持ちいい”という言葉以外、出てこない。
少しがっかりしながらもベッドに体重をかけて立ち上がった。
ゆっくりと家具につかまりながらパジャマを拾い、洗面所で顔を洗うと…鏡に映る自分がまるで別人の様だった。
腫れぼったく潤んだ目、未だ赤みを帯びた身体…そして鬱血痕。
純に愛された印…だろうか。
…それなら…嬉しい…。
胸に咲いた紅い花を指で辿り、昨日の夜の純の唇を思い出そうとして我に返った。
…そうだ…今日は…芳人から帰って来るようにと言われて…。
気持ちが一気に落ちる。
ふわふわと浮かれていたのに、今の雪人は処刑される前の罪人のような気持ちだった。
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