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第54話

居間には純と真人がソファーで寛いでいた。 純は雑誌を、真人は新聞を読んでいるようだ。 身支度を整えた雪人は二人に挨拶をしてから遅い昼食を取った。 サーモンとレタス、それからアボカドとエビのサンドイッチ。 雪人は子供のように牛乳と一緒にサンドイッチを食べる。 いつもの風景。 純と真人は会話をするでもなく、いつものように、まるでお互いが空気のようだ。 決して仲が悪いのではなく、意識することの無い自然体。 …僕と父さんとは違う… 雪人は父親と同じ空間にいることが既に恐怖なのだ。 父親から挨拶をしてもらった事も、気遣うような言葉を掛けてもらった事も記憶には無い。 どちらが普通なのだろう? 雪人には答えが分からない。 黙々とサンドイッチを食べる雪人の髪をいつの間にか傍に来ていた純が撫でた。 「あっ…」 その手は頬に触れ、雪人の顔の輪郭をなぞる。 「雪人…」 純はいつも優しい声で雪人の名前を呼ぶ。 「今日はずっと家にいて」 「…でも…」 …今日は父に呼ばれている。 …純が父からの伝言を僕に伝えたのに…。 「芳人さんの許可は取ってあるよ」 純の言葉は雪人に安堵をもたらした。 ほっとする雪人に新聞を読んでいた真人が言った。 「…代償が少々大きかったけどね」

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