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第65話

「もう何日休んでると思ってるんですか?」 遠慮なく他人の部屋に上がりこんでいる男のセリフだろうか? 雪人は苛立った。 「無断で大学休んで、大人ならもう少し周りに配慮するべきなのでは?」 「め…迷惑はかけてない!」 はあ〜と大木はため息を吐いた。 「それがダメだって言ってるんです。周りに心配させて本人は気づいてない」 大木の発言がどこまで真剣なのか雪人には判断出来ないが、誰が見ても非は雪人にある。 分かっていても後輩に説教されるのはプライドが許さなかった。 「行けない日だってあるんだ!お前に何が分かる!」 不安や動揺で雪人は声を荒らげた。 「…わかる訳、ないじゃないですか?子供ですか?我儘言って甘えないで下さい」 自分の事を良く思っていない後輩にこのタイミングで至極真っ当な事を言われて、雪人は深く傷ついてしまった。 そもそも雪人の事を怒鳴りつけるのは父親の芳人位で、それはさすがに慣れている。 だが、他人に叱られた経験は無かった。 本来の雪人ならば他人に何を言われようとも気に掛けないのだが、純の件があったせいで些か気弱になっていた。 「…そうやって…嫌われて…皆に蔑ろにされるんだ」 そんなつもりは無くとも目から涙が零れた。 悲しいのでは無い。 寂しいのだ。 誰も自分を愛してくれない事実が辛い。 雪人は自分で自分を抱き締め、うずくまった。 …もう…ここに居たくない…。

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