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第66話

「はぁ〜…もう!」 言葉と共に急に温かな身体に包まれ、雪人は驚いて跳ね上がってしまった。 「いてっ!」 しかも跳んだ方向が悪く、大木の顎に頭突き…。 「…大人しく抱かれていて下さいよ、先輩」 「な…何す…ん…」 もがいても抜け出せない、強い力…。 その束縛が心地いい…。 うっとりしつつも頭の片隅では危険信号が点滅する。 「やだ…離して…」 「はいはい」 上っ面だけの抵抗。 それを大木は理解していた。 突き飛ばせば逃げられる、けれども雪人の身体を包み込む絶妙な力加減。 雪人は逃げ出せなかった。 …というよりも逃げ出さなかった。 このまま、この心地良さの中に身も心も溶かされたい…そう思い始めていた。 「ん…」 …寒い…布団… そこにあるべき上掛けを手で引っ張ろうとして… 「…ひっ…!」 伸ばした手が掴んだのは腕…。 独り寝が続いていた雪人は寝起きの頭で必死に思い出そうとして…その腕に捕まった。 「寒いから…動かないで」 男二人が寝るには狭いベッド。 雪人は背中から大木に包まれていた。 寝返りした時に大木の腕が外れて雪人の肩が冷気に晒されたのだろう。 もう寒さは感じなかった。 ドキドキと鼓動が早くなり身体の中の熱が沸騰した。

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