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第78話
「…あ…何で…?」
会いたくて…でも、会いたくなかった人が…目の前にいる。
ドキドキと心臓が早打つ。
だが指先からは血の気が引いていく感覚。
「家に…連絡があった」
…連絡が?
「あっ…」
佐野の件は公にはならないよう大学側に申し入れたので雪人は安心していたのだが、保護者である芳人には学校から何らかの連絡が入ったのだろう。
「伯父さんは忙しいから…代わりに来たよ」
優しく微笑む純だが、雪人の目にはその笑顔が他人行儀にしか見えなかった。
「雪人の部屋に…行っていい?」
「うん…」
“嫌”は無かった。
純のあの姿を…梨花と一緒にいた姿を…見たのに嫌だと断れない。
「あと一つ、講義が終わるまで待って…」
雪人はそう言うのが精一杯だった。
講義が終わり、雪人と純は揃って学校を出た。
雪人の部屋は学校から徒歩圏内にあり、家に着くなり部屋の明かりを点し暖房を入れる。
「何も無いね」
荷物を床に置き、純は小さなベッドに腰を下ろした。
「今…お茶でも…」
「待って」
「…ッ!」
コートを脱いだ途端に純に手を捕まれて雪人は大きく震えてしまった。
「久しぶりなのに…雪人…」
ねっとりと純の視線が絡む。
「…あ…でも…」
気持ちの整理ができぬままで言葉が出てこない。
「会わない間に…嫌いになった?」
…嫌ってるのは純の方だろ?
ぐっと唇を噛み無言でその手を解いた。
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