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第82話

涙の止め方が分からず、いつまでも雪人は泣いていた。 優しくあやしてくれた純はもう部屋にいない。 「話が出来る状態じゃないね」 そう言って部屋を出て行った。 いつもと同じ一人ぼっちの部屋なのに、いつもより寒々しい。 …僕は…もう純に愛想を尽かされたんだ… いつまでも乾かない頬を手の甲で拭ってカーテンの隙間から暗い空を見れば、街頭の光が当たって白い影のように雪が舞う。 …ずっと好きだったのに…やっと会えたのに… カーテンを握る手に力が籠る。 …泣く事しか出来なくて… 雪人は自分を責めた。 …心も身体も雪のように冷たくなって… …消えて無くなりたい… 窓の外で、白い影達はさも天からの使者のように踊っていた。 心にぽっかりと穴が開き雪人は抜け殻のようになっていた。 大学に行って聴講し、資料を集め、家に帰る。 そして家でレポートを纏めてからベッドに入る。 事務的に毎日これを繰り返す。 だが食事は取っているとはいえ抜く事も多く、ベッドに入っていてもなかなか眠れなかった。 結果、雪人は消耗しきっていた。 あれから降り続く雪はその存在を隠しながら静かに雪人の世界を白く塗りつぶした。

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