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第86話
雪人は長めの風呂をあがり、乾いた喉を潤そうと水を取りに居間を通った。
明かりが付いていたから誰かしらそこに居るのは分かっていたが、そこにはアルコールを嗜む純がいた。
成人しているのだから飲酒は違法ではない。
だが、いつまでも酒を飲まない自分と同じだと思い込んでいて恥ずかしくなった。
「お酒…飲むんだね」
ソファーの背もたれに手を掛け、後ろから覗き込んだ?
「雪人も…一杯どう?」
ワインと思しき赤い液体を勧められ、雪人は戸惑った。
だが純が飲むのなら自分も飲める、そう思い誘いに乗った。
「じゃあ、少しだけ」
ソファーに座る純の隣に腰掛け、赤い液体の入ったグラスを傾けた。
口に含み喉に落とす。
鼻から抜けるのは甘い葡萄の香りだけではない。
酸味や苦味、独特のアルコール臭に涙が溜まる。
「お子様にはまだ早かったかな?」
雪人を鼻で笑う純。
その言葉にムッとして、雪人はグラスに残るワインを一気に飲み干した。
「ゴホッ…ン…」
「こうやって飲むんだ…」
純が自分のグラスを傾けると赤いワインが純の口に吸い込まれるように入り…いきなり純に後ろ頭を捕まれて口付けられた。
ゆっくりと体温に近しい温度になったワインが注がれる…。
雪人の喉がゴクンと大きく上下すると、口の端から赤い汁が垂れた。
純はその色を親指で掬い、雪人に口付けた。
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