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第89話
部屋に入り荷物を乱暴に置いた。
雪人にとって真人は父親同然で欲情する事はないのだが、触れられて雪人の身体は体温を求めてだしてしまった。
昨日の純の唇が…雪人の脳裏にチラつく。
夕食までの時間は資料を統計学的に纏めようと思っていたのだが……
…眠る前でも…いいか…
上着を脱ぎ部屋着に着替えて、ベッドに寝転んだ。
昨日の夜を反芻するように今日は一日思いだしていた。
人肌のワインが口移しで喉に落ち、同じ物なのにグラスから飲んだそれとは匂いも味も違った。
純の体温のせいなのか。
口移しという行為のせいなのか。
酸味や苦味といった雑味が官能という名の甘い媚薬のように雪人の感覚を支配していった。
「ン…」
夜の、まだ夕食も取っていない早い時間に、雪人はズボンを脱ぎ下着をずらした。
考えただけで…もうこんなに…身体は反応している。
…自分にはそんな資格は無いのに。
「あ…純…」
たらりとぬるつく体液を伸ばして擦る。
「ン…ぁ…あ…」
強く握り、スピードをあげて…あっけなくイッた。
幾分かスッキリした身体と違い、胸の中はただ虚しかった。
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