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第91話
「んっ…」
喉を滑るワインの香りが鼻を抜け、呼気までも果物の爽やかさを感じる。
雪人は純の脚の上に腰を掛け、軽く後ろに仰け反るような体勢でいた。
純からグラスを受け取ったのになぜか今日も雪人は口移しでワインを飲まされていた。
ゴクンと嚥下しても純の腕は腰に回されたままで、雪人は身動きが出来ないほどにキツく抱かれている。
「ン…苦しい…」
ようやく唇を離して言葉を吐けば純は少し力を緩めた。
「俺を…求めてよ…」
…え?
「もう、俺なんていらない?」
「…違…」
言葉を続けられなかった。
…だって…捨てられたのは僕の方…
「雪人は…俺じゃない人がいいの?」
「ぁ…ン」
雪人は抵抗も出来ないほど純に深く口付けられた。
強引に舌が捩じ込まれ、注がれる唾液を否応なく飲み込み雪人は純を受け入れる…。
だが背中に縋る手で純のシャツを握るのは驚きと抗議からだ。
「…だって…純は…ぅン…」
キスから逃れようととしたが後頭部を捕まえられ、口の中を純に容赦なく隅々まで調べられた。
舌の根元、上顎の奥まで…
半ば酸欠なのか純の供給が過多なのか、雪人はぼうっとしながらも純にしがみついたままだった。
…純は僕を必要としている…?
ぼんやりする思考の中で、雪人は純の腕の中の心地良さに身を置いた。
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