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第95話
隣で雪人が静かに寝息をたてている。
純は雪人の寝顔を見ながら考えに耽っていた。
…いつか雪人に言わねばならない。
…多分雪人は怒るだろう。
…俺を軽蔑するかもしれない。
…でも…
…俺にはやるべき事がある…
頬に掛る髪を指先で払い、純は雪人の唇をなぞった。
純の家から大学に通うようになり、雪人の体調はずい分と回復した。
青白かった頬に幾分が赤みが差し、唇も血色がいい。
そろそろ一人暮らしのマンションに帰ろうか、雪人はそう考えていた。
純の顔が毎日見られるのは嬉しいが、父親である芳人にいつ会うか分からない。
せっかく手にいれた自由をみすみす手放す気にもなれなかった。
ちょっと立ち寄ったマンションで雪人は大木に用立ててもらったノートのコピーを取り出した。
既に自分の物に書き写してあるからもう要らないものだ。
だが何となく捨てられず、本の間に挟んであった。
「お礼…何にしようか…」
贈り物などした事の無い雪人はどんな物を渡せばいいのか見当もつかない。
だが考えておくと大木が言っていたのを思い出し、何が欲しいのか聞いてからにしよう、と思い直した。
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