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第98話

…デートの定番と言えば…映画だろう。 一応、雪人なりにリサーチした結果だ。 「映画、二時半から始まるから、その前に何か食べようか」 「映画、好きなんですか?」 「え?」 雪人は狼狽えた。 「普通は映画見るんじゃないの?」 「見たいんですか?」 問い掛けに問い掛けで返される不思議。 正直に言って映画に興味はない。 だが、それを言っていいものか…。 「いや…特に…」 「それじゃあ、コッチにしましょう」 「あっ…」 手を引かれてビルの階段を二階に登ると、小さなドア。 『 ねこのあしあと』という看板が出ている。 「アレルギーとか無いですよね」 「猫?多分…」 看板には黒猫のイラストが描いてある。 いわゆる猫カフェのようだ。 「すいませ〜ん」 躊躇うことなくドアを開けて中に入っていく大木に雪人はおそるおそる後をついて入店した。 「あの〜大人二人なんですけど…」 店の人と和やかに話をする大木を少し離れた所で雪人は見ていたが、ガラス越しにコチラを見つめる金色の目に気づいた。 「白鳥沢さん?」 「う…うん?」 名前を呼ばれてビクッとしてしまったが、差し出された手を取って雪人は猫たちのテリトリーへと入っていった。

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