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第99話

「ニャー」 手の平や脚に擦り寄る猫。 ゴロゴロと機嫌よく喉を鳴らしている。 「猫は嫌いですか?」 「今嫌いになった…」 大木はあっという間に猫に囲まれ、一大ハーレムを築いているというのに、雪人の周りには一頭もいない。 カラフルな鳥の羽が先端に付いた指揮棒のようなおもちゃを振り回してみても、見向きもしない。 「大木って、身体からマタタビの匂いが出てるんじゃない?」 悔し紛れに雪人は毒を吐くが、大木は自分の袖の匂いを嗅いで首を捻った。 「しませんよ。それよりこっちに来ませんか?」 誘われて中腰になって近寄るとグイッと腕を引っ張られ大木の胸に顔から着地した。 膝の上にいた猫はニャッと短く鳴いて素早く難を逃れ、一歩先から雪人を見ていた。 「よけい嫌われそう…」 「ほら、座って」 猫の代わりに大木の膝の上に雪人が座る。 「え?嫌だよ、恥ずかしい…」 「ここなら好きに触れますよ、ほら」 大木が手を伸ばすとさっきまで大木の膝に乗っていた黒猫が大木の指先の匂いを嗅ぎ、恨めしそうに雪人を見た。 「手…出して大丈夫かな?」 そっと喉を撫でてみる。 だが黒猫にフーっと威嚇され慌てて引っ込める。 「嘘つき。触れない」 どうやら雪人は本格的に嫌われてしまったようだ。 「おいで」 大木が呼びかけると黒猫は嬉しそうに大木に体を擦り付ける。

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