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第109話

大木の部屋は大学からほど近い住宅街にある単身者向けのマンションだった。 「何も無いですが、どうぞ」 「お邪魔します」 細く短い廊下を進めばすぐにテレビやベッドが備えられた部屋に着いた。 「う…わ…」 家具もベッドも黒で統一され大人びた雰囲気。 「その辺に座って下さい」 とりあえず指定されたベッドの上に腰を下ろした。 皺の無いくらいピンと張ったシーツの上に座るのは些か気が引けるが…どうせ寝る時は皺になるのだからと気にしない事にした。 「まだ何か食べますか?」 大木はワイングラスを雪人に渡してその隣に座った。 大木の部屋に来る前にファミレスで軽く遅めの夕食を取り、さっきまでチーズやら何やらを肴にしてビールを飲んでいた。 瓶から注がれる液体でグラスが薄いピンク色に染まる。 「要らない。コレだけでいい」 「雪人…さん」 大木の色を含む声にドキッとする。 「な…何?近いよ」 片手で大木の胸を押す。 「もっとくっ付いてくれないと…ただの飲み会になっちゃうじゃないですか」 「あ…暑いよ。飲みすぎたのかな」 「脱がせてあげす」 「あ…」 雪人より大きな手が器用にボタンを外していく。 胸の先端を掠める指が悩ましい。 「もう、感じちゃった?」 大木は頬を染めて涙目になる雪人の顎を掬った。

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