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第123話
…もしかしたら愛されるという事はこういう事なのだろうか…?
…雪人は大木にキスをされた。
それも…身体中に。
淫靡な熱を感じさせず、まるで愛おしいものに触れるように丁寧に優しく触られた。
ただただ雪人が気持ちいいように感じる…奉仕と言ってもいい。
だから、雪人は今だけ勘違いする事にした。
…僕は…愛されている…
「ありがとう」
雪人は隣で自分を愛おしそうに見つめる男にそう言った。
「泣かしただけなんで…」
礼を言われると思っていなかった大木は少し照れたようだ。
それでも今の雪人には嬉しかった。
…それが錯覚だったとしても。
「ん…」
夜中に雪人は目を覚ました。
そのまま大木の部屋に泊まることにして風呂に入り、夕食を取った。
いつもとは違う喜びを感じていたせいか今頃喉の乾きに気づいた。
そっとベッドを抜け出して床に足を着く。
大木を起こさぬようにして水道水をコップに注ぐ。
コクンと喉を鳴らして水を飲み、ベッドに戻る途中で雪人はふと思い出した。
…オオキケント…
…よくある名だ。
そう思い直し雪人は大木の眠るベッドに潜り込んだ。
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