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第125話
「これどうぞ」
そう言って大木は雪人にキーケースを渡した。
「スペアキーです」
半ば同居人のように雪人は大木の部屋に入り浸っていたせいだろう。
「え…と、あ、ありがとう…」
鍵を受け取りつつも戸惑いが隠せない。
…僕を待ってくれたりするの…迷惑…だったのかな…
大木は雪人が帰るまでいつまでも残って待っていた。
…いや、そもそも迷惑なら鍵なんか渡さないか…
ぐるぐると終わりの見えない問答を始めた雪人の頭を大木は撫でた。
「大歓迎って意味です」
大木に言葉にしてもらい、雪人は安堵した。
…嬉しい
…恋人みたい…
「早速ですが、今日は用事があるので先に帰ってくれませんか」
「うん」
勝手に部屋に入ることを主に許された雪人は、渡された鍵を大切に鞄にしまった。
「ただいま」
誰もいない部屋に一人で帰ってきた。
それも大木の部屋に。
雪人は早速合鍵を使い部屋に入ったが、何とも不思議な感じがしてソワソワと落ち着かない。
「え…と、本でも読んで…」
自分の鞄に手を掛けるが大木の部屋の棚に目が止まった。
「あ…これ…」
無意識に手を伸ばしてスッと引き出す。
「ん?」
一緒に薄い冊子が引き出され、ストンと床に落ちた。
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