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第126話

…他人の物を勝手に見てはいけない。 そう思いつつも床に落ちたそれは見ろと言わんばかりに中身をさらけだしていた。 「あ…写真…」 どこかの家の庭で撮ったのだろうか。 若い女性が赤ちゃんを抱き、その女性に寄り添うように子供が膝に絡みついている…ノスタルジックな雰囲気に包まれていた。 「…これ…」 雪人はその女性に見覚えがあった。 それはおそらく純の母だった。 そういえば小さな子供は純に似ているような気もする。 純の母は病弱で地方で暮らしている、と純の父真人は言っていた。 「でも…他人の空似かもしれないし…」 純に兄弟がいるなんて話は一度も聞いたことが無かった。 まだ数枚の写真がファイルしてあったようだが、雪人は他のページは見ずに表紙を閉じた。 モヤモヤする気持ちを抑えて、雪人は冊子を本棚に戻した。 熱い鍋の中がふつふつと沸騰し、いい匂いが辺りに漂う。 雪人は大きく息を吸い、肺に匂いを満たした。 「そろそろ火を止めて…食べましょうか」 炊飯器で炊いたご飯をカレー皿に盛り、出来たてのカレーをかける…。 …匂いと見た目がヤバい…。 今日は大木が遅くに帰って来たので、雪人も夕食作りを手伝ったのだ。 初心者向けでまず失敗しない定番メニューといえばカレーだろう。

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