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第127話
「美味しい」
「美味いですね」
二人でフーフーと熱々のカレーを冷ましながら口に運んだ。
…自分で作れるんだ…
…スーパーで買った食品を自分で料理しただけなのに!
雪人は大木に言われるままに肉や野菜を切り、鍋に放り込んで炒め、頃合を見計らって水を加えて煮立たせルーを投入した。
包丁すらまともに手にした事の無い雪人が何とかカレーを作れたのは辛抱強く指導した大木のおかげだった。
「あ…りがと…僕、初めて料理したから」
「俺は子供の頃からずっとやってたし、最初はこんなもんでしょ」
…子供の頃…
大木自身について、雪人は何も知らない。
もともと雪人は友人と呼べるほど付き合いのある学生もいないし、他人の噂話にも一切興味が無い。
そんな雪人が大木について何を知っていようか。
「…ご両親は…?」
「…居ません」
雪人の問いに、大木は表情を変えずに答えた。
「…母は結婚しないまま俺を産み、もう亡くなってます」
「…ゴメン…」
興味本位で聞いてしまっまた事を雪人は後悔した。
「いえ、事実ですから」
…あれは君のお母さんなの?
…あの男の子は誰?
スプーンでルーを掬い口に運ぶ。
雪人は一番聞きたい事を聞けずにいた。
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