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第128話
二人で夕飯を食べ、雪人は大木とともに食器類の片付けを行い一日を終えた。
順番に風呂に浸かってベッドに入る頃、雪人はあの写真を思い出していた。
…大木と純…純の母…
雪人には知らない事が多すぎた。
知ろうともしなかったせいなのか、それとも生きていく上で秘密が増えていくのか…それさえも分からなかった。
一〜二週間に一度、雪人は自分の部屋に行き、必要な物を入れ替えた。
そして自分自身のルーティーンをいつしか忘れている事に気づいた。
引き出しから取り出した薄いファイル。
…母さん、ゴメン。
…忘れていた訳じゃないんだ。
雪人の母は既に亡くなっている。
でも、母に報告したい事があった。
…いつまで続くか分からないけれど…毎日が楽しいんだ。
色褪せた思い出の中にいる母に、雪人は自分の気持ちを告白した。
手早く用事を済ませて大木の部屋に帰ってくると、大木は携帯相手に珍しく声を荒立てていた。
「勝手なことを言わないで下さい。俺には俺の生活があります」
雪人は驚きつつ、大木が誰の何に怒っているのかが気になりそっと様子を伺った。
「あなたは法律上俺の兄かもしれませんが、そんなの知ったこっちゃない。偉そうに言わないで」
…兄…?
…法律…?
…大木にもきっと自分のように闇があるのだ。
大木の言葉を聞いていた雪人は、無意識に口角を上げていた。
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