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第130話
“自分の部屋に帰った方がいい”
大木の口から言われた言葉は、少なからず雪人にショックを与えた。
自分を否定されたように感じ、勝手に愛されていると妄想した事を雪人は恥じた。
「あ、うん。そうだね…そうする」
大木と目を合わせられず背を向けて答える。
顔なんて向けられない。
雪人の目は涙でいっぱいになり、室内ですら歪んで現実を見ることが出来なくなっていた。
「先にお風呂入るね」
そう告げて雪人はバスルームに逃げた。
バタンと扉を勢いよく閉めて背中で押さえる。
決して大木は入ってこない。
それでも…今、これ以上心に痛手を負う事に雪人は耐えられなかった。
雪人はぼんやり湯船に浸かった。
高まっていた緊張感はどこかへ行ってしまったようで、冷静になってみると些か自分は過剰に反応したと反省した。
…大丈夫、大木は親切で言ったんだ。
…僕が…この部屋で一人になるから…
…だから…
幸せだった気持ちは半減して…むしろ反動で孤独という沼に逆戻りして…雪人は唇を噛んだ。
風呂から上がった雪人に気づき、大木は入れ替わりに風呂に入った。
何となく顔を合わせづらい雪人は、そのままベッドに潜り込んだ。
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