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第131話
不安な気持ちを抱えたままでは安眠など出来る訳もなく、布団の中で雪人は眠れぬままいた。
柔らかな布団に潜って脚を抱える…。
…まるで子供のように。
風呂から上がった大木は雪人のいるベッドには来ず、ノートパソコンに向かいキーボードを叩いた。
指がプラスチックを叩く僅かな音…それは雪人にとって心地よく響き、眠りへと誘った。
うつらうつらと半ば夢の世界に落ちようかという時、ベッドが沈み大木が布団に入ってきた。
だがいつも自分を包み込んでくれる腕は雪人には伸びてこなかった。
暖かい布団の中、雪人の心はゆっくりとかじかんでいった。
「じゃあ、今日は自分の部屋に帰るから…」
雪人は気まずさから大木の顔が正面から見られない。
同じコマに講義がある時は一緒に学校に行ったりもしていたが今日は大木は一限目が無く、雪人は先に家を出た。
いつも使っている道でも、一人で通う道のりはいつもより遠く感じた。
いつものように講義後は図書館で過ごし、閉館時間になって自分の部屋に向かった。
部屋に帰っても何もする気が起きず、大きなカバンを放り投げ、乱暴にベッドに転んだ。
今日は…何も…したくない…
横目でカバンを見た。
朝、大木の部屋を出る前に置いてあった荷物を幾つか持って部屋を出たのだ。
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