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第132話
「疲れる…」
いつものように過ごしていたはずなのに、ベッドから起き上がる気力が出てこない。
幸せだと感じていた時間の反動は雪人が思うより大きいものだった。
…また、捨てられるのか…
…純に捨てられたように、大木にも…
「耐えられない…」
枕に頭を埋めてただ脱力する。
「捨てられる前に…」
…また…
…逃げてしまおうか…
真実から目を逸らし、背を向ける…。
自分は再び贖罪の念に縛られようとしているのか。
「どうしよう、分からない」
雪人の目から涙が一筋流れた。
怠い身体に熱いシャワーを浴びて気持ちを切り替える。
グジグジと悩み、雪人は大木の部屋に戻る事を決めた。
あの時は逃げる事が自分を守る事だったが、今は違う。
独り善がりではなく正面から大木に聞いて、それからだと。
「…ただいま」
「おかえりなさい」
大木は少し驚いた風だったが平静を装った。
「エプロン、似合いますね」
調理初心者の雪人は目先の事に捕らわれやすい。
調味料や肉汁で服を汚さないように、安心して料理に集中する為に用意した。
「新婚さんみt…」
「早く上がってよ…」
…面と向かって言われると恥ずかしい…
けれど…
まんざらでもない自分がそこにいた。
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