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第138話
気怠い身体を動かす気になれず、雪人は大木の胸で微睡んでいた。
節々はギシギシと軋み、散々喘いだせいで喉も痛い。
大木が起き出さないのをいい事に、雪人は彼の匂いを胸いっぱいに吸い込んでこの幸せを噛み締めていた。
触れれば温かな素肌に自分の頬を押し当て、大木の心音を聞く。
トクン、トクン、と規則的に拍動するその響きは雪人に安心感をもたらした。
「子供みたい、可愛い」
回されていた腕が雪人を捕らえた。
ギュッと力を込められても素直に嬉しいだけ。
「身体…辛いですよね」
雪人は首を振った。
「辛く…ない」
…これは幸せな痛みだから…
大木の胸に額をコツンと当てて、雪人は目を閉じた。
気持ちを確かめあったあの日から、雪人は毎日のように大木に抱かれた。
どちらからともなく引き寄せられるように求め合い、身体を合わせる。
「これじゃ外で服が脱げないよ」
雪人は鏡で自分の姿を見て頬が緩む。
白い肌に斑に浮かぶ鬱血痕。
毎日のようにそれは量産され、濃い色から消えそうなものまで雪人の身体に数え切れないほどの赤い花を咲かせていた。
「そもそも、外で脱ぐ必要ないでしょ?」
大木の言うことは一理ある。
だがこの首にあるのは襟からギリギリ見えそうだ。
…見せたくない、けれど見て欲しい…。
…僕は…愛されているんだって…
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