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第142話
あの日から…雪人と大木が二人で海に行った日から、雪人は何となく落ち着かない大木の様子が気になっていた。
無意識のうちにスマホの入ったポケットの上に手を置いていたり、スマホの画面をチェックする回数が目に見えて増え、バイブレーターの振動にすら表情を変える…。
…何か困っているんだろうか?
…僕じゃ役に立たない?
雪人は口に出せず胸を傷めた。
…何かしてあげたい…
切にそう思っていてもただ見ているしか…雪人はそうする事しか出来なかった。
講義が終わって、雪人は図書館に向かった。
いつもの如く、本を読み漁る為に。
「白鳥沢くん」
渡り廊下の途中で呼び止められて振り向くと見覚えのある顔。
「…え…と…」
名前は出てこない。
…確か同じ講義を取っていた…
「高見だよ。名前、しらないんじゃないかと思ったけど…その通りだった」
人懐こく笑う姿をに好感を持った。
「何か…」
「教授が君を呼んでいたよ」
「分かった。ありがとう」
伝言だけ伝え、高見は手を振り走っていった。
…何だろう。
教授に呼び出される心当たりは…ない。
そう思いながらも雪人は教授のいる研究室に足を向けた。
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