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第143話
「どういうこと?純…」
「そのままだけど?」
「大木は関係ないだろ。僕を直接呼び出せばいい」
純はコーヒーカップを持ち、ソファーに足を組んで座っていた。
教授からの呼び出しを聞いて研究室に行けば、そこに純がいた。
理由を問えば、大木が呼び出しに応じないから。
…僕を呼び出すための口実に大木を利用した…
雪人はそう思った。
純はカップの中身を一口啜り、興奮した様子の雪人を見上げる。
「…あるよ」
「聞きたくない」
はぁ、と大きく息を吐き出して純は少し伸びた髪を掻き上げた。
「ケントは俺の弟」
「え?」
「だからお前にとっても他人じゃないだろ?」
「嘘…」
…純の…弟…
…僕達は…従兄弟…?
「純は…一人っ子…だったじゃないか?」
「誰がそんな事言った?」
…そう、誰も…誰も一言だってそんな事言ってない…
雪人は思い込んでいたのだ。
「雪人が家に寄り付かないからケントを来させたいんだけど、着信拒否するしメールも無視するし…」
…何で大木は呼び出されなきゃならない…?
「…だから雪人から家に来るように言ってくれない?」
…純は何をさせられる…?
そう思うとあの日が脳裏に浮かぶ。
あの青白い身体が、あの赤い唇が…。
雪人は血の気が引いていくのが分かった。
背筋が凍り、痺れた指先に力が入らず感覚も無い、
呼吸は早まり鼓動が身体を揺さぶって…目の前が真っ暗になった。
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