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第144話

真っ黒い色の先に光が見える。 その色は赤でも青でもなく黒ではない別の色だった。 光の当たらない所には黒い影が出來ていて、僕がいる場所は光の当たらない闇の部分だった。 …多分気を失ったのは数分。 雪人は見知った天井を眺めて、それが間違っていた事を知った。 純と真人が暮らす家のいつもの客室。 ただ、そこはもう雪人の部屋と言ってもいい程雪人は寝泊まりし、私物を置いていた。 常夜灯がぼんやりと室内を照らし、今は夜。 あれから数時間が経っていた。 …体が怠い。 …体もだが心が酷く疲れた。 大木と純が兄弟だった事は雪人にとっては心を抉る事実になった。 …僕はいつも何も知らない… …全てにおいて蚊帳の外… …代償の事だって、僕だけ知らなかった… …あの時純が言わなければ僕はずっと知らないまま… 溜まった水が目から溢れた。 「ひっ…くっ…ぅ…」 するとぼろぼろと涙が零れて、雪人は嗚咽を漏らしながら一人で泣いた。 散々泣いて、泣き疲れて雪人は再び眠ってしまった。 カーテンの隙間から陽の光が入り込み、いつの間にか朝になっていた。 起き上がる気力は無く、雪人は横になったまま静かに目を開けていた。 「雪人」 突然名前を呼ばれてビックリりはしたが、雪人は平成を装って声のした方に顔を動かした。

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