145 / 186
第145話
「具合はどうかな」
「.......」
…真人さん…
雪人は僅かに顔を動かした。
「話す気力もないのかな?そのままでいいよ」
すぐ側の椅子に腰掛け、真人はまるで子供をあやす様にポンポンと布団を優しく叩いた。
「君は純に守られていたから…その皺寄せが出たかな」
「.......」
「君がそれを望んでいたかどうかっていうのはこの際重要じゃない。純が望んだんだ」
…純が、僕を?
「純は君を守るためにアメリカに行った。これは純から聞いたね」
雪人はゆっくりと瞼を閉じ肯定の意を伝える。
「君と梨花の縁談…これはもうずっと前から決まっていて、本当は君が梨花を娶る予定だったのだが…」
真人は不意に雪人から視線を外し、膝の上で指を組んだ。
「…君は梨花が怖かった?だから純が自分が何とかしようとしてみた様だが…」
真人が困ったような顔を雪人に見せる。
「…残念な事に純は子供を作れない身体だと分かったんだ」
「え…?」
…こども…作れない…?
「性交は出来るんだが精子に異常があって妊娠にはほぼ結びつかない」
…だから…?
あの恐ろしい日が雪人の脳裏に浮かんだ。
今思い出しても身震いし、身体が凍えていく。
…だから純は…あんな事を…?
散々泣いたはずなのに、雪人の目から再び涙が零れた。
ともだちにシェアしよう!