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第146話

…知らない。 …自分には何も知らされない。 …純の苦悩も。 …純と大木についても。 雪人はただ静かに泣き、その涙が止まるまで真人は黙っていた。 「ぼ…くは、どうしたら…?」 濡れた瞳で真人を見つめる。 「もう少し眠ったら純と話をしてごらん」 悲しげな顔をして真人は言った。 「そして、君の想いを伝えればいい」 「.......」 …純と…話を… 空腹で目が覚め、雪人はベッドを降りた。 遅い昼食を取り、食べながら純との事を思い返した。 …いつも側にいて、いるのが当たり前だったのに…。 突然姿を消した純。 …僕が出来なかったから… …だから純は… 自分のせい…雪人はそう思った。 「純…」 ドアを開き、身体を半分部屋に入れて雪人は純を呼んだ。 机で書き物をしていたのだろう、純は顔を上げて雪人に応えた。 「雪人、入って来れば?」 おずおずと純の部屋に入ったが、雪人は叱られた子犬みたいにドアの近くにうつむいたまま立った。 「おいで」 両手を広げて純が雪人を呼べば少し嬉しそうな顔をして雪人は純の目の前に行った。 「僕…何も知らなくて…多分純の事、凄く誤解してた」 「本当の事だから、誤解なんて何もないよ。ほら雪人、ココ」 促されて純にぴったりとくっつく。 「知りたい、純の事。教えてくれる?」 「ああ」 雪人から純の顔は見えないが、やや困惑した表情で純は答えた。

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