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第149話
「古くからの慣習だから、突然止める事は出来ない」
「どうしても?」
「…」
本心とはやや異なっているが、純は頷いた。
…本当はこんな物に縛られていいなんてちっとも思ってない。
…でも、これが僕の…存在意義。
「もう一度梨花の相手…出来る?雪人」
雪人の瞳は動揺を隠せない。
「.......出来ない…。けど、僕も子供が…その…作れないんじゃ…ないの?」
緊張からか雪人の言葉はたどたどしい。
「雪人は…作れる…。僕と違って」
「え…じゃあ…?」
…他に誰が?
雪人は最後の言葉を飲み込んだ。
何だか今は聞いてはいけない気がして…。
「次をあたってるんだけどね、いい返事が貰えなくて」
「え…?」
…それって…?
「白鳥沢の血を引く…もう一人」
…純が、雪人を見て口角を上げた。
「大木.......?」
純は黙っている。
「大木も…?」
そして、薄く笑った。
「な…んで?」
「ケントも白鳥沢の血筋だからだよ、雪人。もう、この血を残せるのは雪人とケントしかいないんだ」
純が雪人の細い腕を掴んで言う。
「だから…分かるだろ?雪人」
見上げる純の目が雪人を威圧する。
今までの純からは考えられなかった行為だ。
…本気なんだ…。
だが雪人にはそれを大木に言う自信は全く無い。
好きな人に別の人間を抱けとは…。
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