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第150話
赤く、燃えるような空に足を向け、手を引かれるように雪人は歩いていた。
自分の胸の内にはまだ消化し切れていない想いがある。
どうしたらいいのか…どうすべきなのか…。
「はぁ…」
純の話を聞いた後…あの家が辛くなって、何も言わずに出てきてしまった。
…純はずっと…僕と…家のために…。
…大木に会いたい。
…でも、会ったら…独占欲が抑えられない…。
雪人が誰かの事を思ってこんな胸を痛めたことは無かった。
家のために計られたとはいえ、二度と梨花と身体を繋ぐ事は出来ない。
大木が自分の代わりに梨花と…という考えにもたどり着かない。
かといって古いしきたりに囚われるな、と言って純の今までを全否定する事も出来ない…。
…胸が…苦しい…
…僕は…どうしたら…?
悩みながらも雪人は大木の部屋に帰ってきた。
明かりのついていないうす暗い部屋。
大木は暗い部屋の中で目を開けていた。
「…ただいま」
暗い瞳に僅かに光が点る。
「もう、帰ってこないかと思った」
不意に視線を逸らされた。
「帰ってきたよ」
「…うん」
雪人はベッドに座る大木に近づき、正面からふわりと抱いた。
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