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第153話
「知ってたんだ」
「…うん」
あれより以前に自分の事を知っていたという大木の言葉に雪人は少し照れた。
「言ってくれれば良かった」
「…うん」
「真人さんは優しくしてくれた?」
「…うん」
「純も?」
「.......うん」
最後は恐らく嘘だろう。
純は雪人以外に心を開かない。
…きっと大木は心無い言葉に傷ついている。
「大丈夫。雪人が、いる」
大木は顔を上げることなく雪人の腕の中のままだ。
「もしかして…純に…その…梨花の事…」
梨花の名前を出すと大木の肩が一瞬震えた。
…あぁ、やっぱり。
…大木も白鳥沢の人間だから…
…だから、きっと…。
「…ごめん、巻き込んだ」
自分が不甲斐ないせいで、大木にも純にも迷惑をかけている。
…でも…どうすればいい…?
考えても答えは出せなかった。
「二人揃って来てくれるなんて、嬉しいよ」
純が満面の笑みで雪人と大木に言った。
「さ、こんな所でする話じゃないし、入って」
いつも勝手に入っている純の住む家。
大木を伴っている為に雪人は初めて玄関で呼び鈴を鳴らした。
普段ならリビングで話をするのだが、今日は応接室に通された。
来客用扱いのようだ。
「…それで、決心は出来たの?」
純はいきなり核心を突いた。
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