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第154話

…そんなの出来るわけない。 …誰かが辛い思いをする。 純は表面上は穏やかな顔をしていた。 だからこそ純が何を思っているのか雪人には分からない。 「雪人、また梨花に抱かれる?それともケントが梨花を抱く?」 視線は真っ直ぐに雪人と大木を貫く。 「僕はどっちでもいいよ」 純はフラットな抑揚で言葉を吐いた。 「お…俺が梨花さんを抱けば…それで終わりますか?」 「ああ」 大木が梨花を…? 「嫌だ、何で大木が!」 …自分の好きな人が、自分以外を抱くなんて…。 「じゃあ雪人が?でも、雪人は一人じゃ梨花の中に射精出来ないでしょ?また僕に突かれながら梨花の中に出す?」 純の言葉が雪人を刺す。 あの日、雪人は純に抱かれながら梨花の中に射精したのだ。 顔色が青くなり、身体が小刻みに揺れる。 雪人にとって、二度と思い出したくない悪夢だった。 雪人の異変に大木は驚きながらも抱き寄せた。 「酷い…そんな事がよく出来る…」 「お前に何がわかる?」 大木には分からない。 雪人と純の事。 白鳥沢家の事。 「何も守る事が出来ない奴が口を挟むな」 「でも、やり方ってものがあるじゃないですか」 「…やり方?いいんだよ、これで」 軽く顎を上げ、見下ろすように大木を睨む。 「代々このやり方で結果を出してるんだから!」 それまで穏やかだった純の表情が崩れた

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