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第156話
…三人とも父親が同じ…
…じゃあ、大木の部屋で見たあの写真…
…あれは大木と純と…その母親…
純の母親は地方で療養していると雪人は聞いていた。
だがそれはもう何年も前に伝え聞いた話だ。
「俺が…梨花さんを抱けば…」
大木が一言呟いた。
「…嫌だ…」
…自分が男として不甲斐ないから純と大木に迷惑を掛けている。
…そんなの、分かってるんだよ!
自分を責め、大木の身体に凭れて泣きそうになっていた。
「やっぱり俺が…」
雪人の肩を押し、大木は部屋から出て行った。
雪人は大木を止められなかった。
真っ暗な部屋に雪人はいた。
部屋の闇と夜の闇は同じように見えてもその境界線は全くの別物で決して同じでは無い。
雪人は闇に囚われてしまったように動けずにいた。
ソファーに深く腰を掛け、窓の外を眺める。
月が見えないせいかいつもより空に星が瞬いていた。
だが月よりも星よりも雪人の心を占めるのは…。
「泣いてる」
手のひらが涙を攫う。
冷たい頬を撫で、髪を梳いた。
「雪人」
名前を呼ばれても触れられても、雪人は黙っていた。
心が重い。
…体の力を抜いて身を任せれば、ずぶずぶと闇に沈んでいきそうだ。
雪人は目を閉じた。
閉じた目の端から一筋、涙が落ちた。
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