161 / 186
第161話
手を引かれ、真っ白な雪の上に付けた足跡。
恐る恐る歩いていたのにいつの間にか走り出し、じゃれ合っていた。
抱きしめたまま倒れ雪まみれになって笑い合う。
知らない場所で不安な気持ちだったのが嘘のようだった。
両方の手のひらを天井に向けて、雪人は顔を覆っていた。
「ずっと…ずっと純は…僕を守ってくれた…」
…本当に“お兄ちゃん”だった…。
「う…うぁ…ぁ…」
純なりの、雪人への愛情…。
他人から見ればその形は歪だ。
だが不器用な純からの、不器用な雪人への想い。
…純が…好き…
…子供の頃から…ずっと…
溢れる想いが涙と一緒になって止まらなかった。
「泣いた?」
頷く雪人の頬をケントが優しく撫でる。
「…ケ…ケント…」
雪人が恐る恐る名前を呼べば、雪人にピッタリとくっついてソファーに座る。
そして愛おしく雪人を胸に抱いた。
「名前で呼んでくれるんだ。ありがとう」
ケントの指が雪人の髪を撫で付ける。
「ゴメン…」
…それは何に対する謝罪なのだろう…
「…ゴメン…ケント…ゴメン…」
その言葉をはケントの心を重くした。
ともだちにシェアしよう!