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第162話

雪人は温かな胸に顔を埋めた。 「ケントに…嫌な事させた…」 自分が出来なかった事。 「雪人は…慰めてもらったみたいだね」 雪人は顔を上げてケントを見た。 その顔は怒っている風でもなく呆れているようでもなく…ただ雪人を見つめていた。 「ゴメン…ケント」 目を逸らすと大きな手が雪人の背中を滑った。 「さっきから謝ってばっかり」 「…だって…僕は一人じゃ何も出来ない…。いつだって二人に甘えて…」 止まっていたはずの涙が再び溢れてくる。 「好きなのに…愛してるのに…面倒ばかり押し付けて…」 そこから先は言葉にならなかった。 悲しみを吐き出す口をケントがきつく塞いだせいだ。 「ン…な…んで…ぁ…」 ケントは激しく口腔内を貪る。 歯列に舌を這わせ、上顎を執拗に舐めた。 「は…ぁあ…ん…」 開いた雪人の唇から飲みきれない涎が流れ落ち、輪郭を伝った。 いつの間にかケントに抱きしめられ、その力強さに心が安らぐ。 角度、深さを変えながら優しく、激しく求められた。 「キスは…しなかった」 長いキスの後、真面目な顔つきでケントが言った。 「…雪人…だけ…」

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