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第166話
玄関のチャイムが鳴り、雪人とケントが出迎えた。
黒いコートの影から伺うようにこちらを覗き見ている小さな瞳。
その小さな瞳が不安で揺れているのが見て取れる。
きゅっと握られた指は純のコートの袖を申し訳程度に握っていた。
「こんにちは、よく来たね」
見知らぬ大人の顔を見上げる目に涙が溜まった。
「部屋でお友達が待ってるよ」
「あ!来たんだね!」
突然雪人の脚に身体を預けて小さな身体が顔を出した。
「待ってたんだよ!早くおいでよ!」
その言葉は目に溜まっていた涙を弾き飛ばした。
「うん!」
小さな手が小さな手を取り、慌ただしく靴を脱ぎ室内に入っていった。
「やっぱり子供は子供がいいんだね」
「そのようだ」
…僕に純がいたように。
…純に僕がいたように。
「純、お疲れ様。子供達にお菓子をあげてお茶にしよう」
「ああ」
純はコートに付いた雪を手で払い、靴を脱いだ。
「ほら、おやつにしよう」
ケントが子供達を椅子に座らせた。
「桜人(おと)は赤いコップ、千隼(ちはや)は青いコップ。お菓子は半分こだよ」
雪人がアメと焼菓子を二人に手渡す。
ニコニコと受け取る千隼に対して桜人の表情は暗い。
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