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第167話
「どうしたの?嫌いなものある?」
黙って首を振る。
「黙ってたら分からないよ」
ケントが桜人と目線を合わせようと屈んでみても彼は下を向いていた。
「千隼、桜人とコップ変えてもいいか?」
純が千隼にそう言うと千隼は桜人に青いコップを差し出した。
「僕ね、赤い色も大好きなの。桜人のと僕の交換こしてもいい?」
「いいよ、桜人は青い色が大好きだから」
パッと顔を上げた桜人は喜びの表情を隠せない。
…ああ、コップの色…
…そんな些細な事で子供は気持ちが左右されるのか…
コップを交換し、今二人は仲良くおやつを食べている。
「純はどうして分かったの?」
隣のソファー座り、雪人は純に聞いた。
「雪人がそうだった」
「え?そんな事あったかな?」
雪人は自分からは絶対に言わない。
桜人も同じ。
譲らない者と汲み取る者。
二人は微笑ましい様子で笑いあっている。
おやつを食べ終えて隼人が雪人に言った。
「お外で遊んでもいい?」
「いいよ」
窓の外を見ていた桜人の顔がぱあぁっと輝いた。
「桜人、僕とお外に行こうよ」
「うん、いいよ!」
…桜人と隼人なら、きっと大丈夫。
…僕と雪人のように…。
…今日から新しい生活が始まる。
…今度は僕達がこの子達を育てる番。
ーおわりー
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