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SS-1-4『 きみとぼく』

「ぁ…ん…ぉ…と…」 こんな時にも思い出すのはのは桜人の事。 布団の中で擦り寄る桜人の身体の熱を思い出して目を閉じた。 妄想の中で桜人の身体の至る所を触り、余すところなく舐めまわした。 無垢な魂を汚す行為に興奮する自分。 桜人の枕に顔を埋めて声を殺しながら高みを目指す。 「…くッ…ン…」 欲望を吐き出して…罪悪感に襲われた。 …歪んでいる。 桜人に対する固執。 「はぁ…手、洗ってこよ」 そっと床に降り、部屋を出た。 「子供は早く寝なさい」 居間に明かりが付いていて、誰が居るのかと見に寄ったらケントさんだった。 ケントさんは僕の父親の弟。 叔父さん、って呼ばれたくないと言い張り、ケントさん呼びを強要されている。 「喉が乾いちゃって」 「…桜人と喧嘩でもした?」 「…してない」 …はぁ、と目の前でため息を出された。 「アレは…雪人に似て自分からは折れないから、千隼から声を掛けて欲しい」 「…はい」 …お休み、そう言った横顔は叔父なんかじゃない。 父親のそれだ。 モヤモヤした気持ちを抱えて、僕は部屋に戻った。 盛り上がる掛け布団と床には桜人のスリッパ。 「おーと」 掛け布団を捲ればあの頃と変わらない不安げな瞳と目が合った。

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