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SS-2-1『兄弟 』
「桜人は今日も千隼にべったり?」
雪人が居間のソファーで寛いでいると遅い時間に帰宅したケントがコートを脱ぐなり尋ねてきた。
「おかえり、ケント。一日中べったりだよ」
昨日は千隼だけが外に出掛けた。
桜人は何故自分が連れて行ってもらえないのか四歳の頭では理解が追いつかず、昨日からずっとぐずっている。
「母親との面会は来年まで続く。慣れるしかない」
「桜人の母親は…あれっきりだね」
「下手に焦がれるよりはいい…」
純の言葉は冷たく聞こえるが、いっその事突き放してくれた方がお互いにとっていい。
雪人達は意図せずして子供達を迎え入れた。
彼らの母親は、親権を放棄したのだ。
もともと愛ある行為で授かった訳では無かった。
あったのは…打算としきたり。
梨花はすぐにでも桜人を雪人の元に行かせたがっていたが、雪人は反対した。
せめて三歳までは母親と暮らして欲しいと。
そして桜人は白鳥沢家にやってきた。
千隼も似たような状況だったが唯一違ったのは一年に二回、千隼を向こうの家に行かせる日を持つことだった。
桜人はそれが理解出来ない。
自分は“ 無い ”のに千隼には“ ある ”
それが無性に不安を呼ぶのだった。
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