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SS-2-6『兄弟 』

サンドイッチを桜人とケントさんと三人で、ダイニングテーブルで取った。 父は今日も仕事だと言っていた。 いつも一緒にいてくれる雪人さんは今日は珍しく朝からどこかに出かけていた。 「桜人、レタスも食べなさい」 「…はい」 レタスは桜人が嫌いな野菜の一つ。 一つから一枚抜いていたのをケントさんに咎められた。 「桜人、ハムとパンと一緒に食べればそんなに気にならないと思うけど」 桜人は僕を見てふるふると首を振る。 「…苦い」 「敏感過ぎるだろ」 ケントさんは言葉とは裏腹にとても嬉しそう。 …あぁ、今、このテーブルを囲んでいるのは、血の繋がった親子だけなんだ…。 桜人とケントさんを交互に見ていたらケントさんと目が合った。 「千隼、本当にもう行かないのかい?」 「はい、必要ありません」 「そうか…長い間ご苦労さま」 そう言って、ケントさんが少し寂しそうに笑った。 勉強するからと部屋に戻った。 もちろん桜人も一緒に僕の部屋にいる。 「う〜ん、眠い」 桜人は僕のベッドにゴロンと横になっている。 「桜人、食べてすぐは牛になるって言うよ」 「ならないもん」 「おーと、あっ!」 「ちーやも牛になれ!」 腕を引っ張られて、ベッドに倒れ込むと桜人が僕の身体に乗っかった。

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