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SS-2-8『兄弟 』

「ちーや…ちー…」 「桜人、重いし…擽ったい」 桜人が僕の胸に子猫のようにすりすりと顔を埋める。 「…ン…おと…」 密着する身体。 鼻先で踊るさらさらの髪。 桜人の匂い。 身体は僅かに形を変え始め、今まで感じた事が無いような…高揚感。 柔く躱(かわ)そうと試みるけれど、桜人は僕の身体に腕も脚も絡めて身体を離さない。 「ほら、どいて…桜人」 「や…」 「嫌じゃないよ」 「.......うー…」 …何でだろう。 桜人の我儘なのに、無碍(むげ)に出来ない。 「はいはい」 さらさらの髪を撫で、僕は抵抗を諦めた。 「…ちー…」 ベッドに横になって向かい合っている桜人の目に涙が溜まっていた。 そんな不安そうな顔で見つめないで。 「泣きむし桜人…」 僕は桜人を胸に抱いて、悲しみの雫を唇で吸い取る。 「…桜人から離れない」 額に口付ける。 「…桜人の傍にいる」 瞼に口付ける。 「…桜人.......好きだよ…」 「ホント?ホントに?」 胸に抱いていたはずの桜人がジタバタと手足を動かし、横を向いていた僕の腰辺りに跨った。 「ちー…僕ら両思いだ…」 「…うん?…え、桜人…?」 上から覆いかぶさり、桜人は僕をキツく抱きしめた。 「桜人.......」 名を呼び、その後に続けた言葉は.......桜人の唇に吸い込まれた。

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