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SS-2-9『兄弟 』

「ん…ンン…」 桜人に口を塞がれて息が出来ない。 これは桜人の悪戯? 酸素を求めて口を開けて、歯がガチンとぶつかった。 「いッ!」 「桜人、痛い」 「初めてだから…、上手く…いかない…」 …初めて…の、キス? 「桜人。キスは、大事な人とするんだよ?」 「…!」 眉間に皺を寄せて、桜人が僕を睨む。 「ちーが、千隼が大事。一番大切なの!」 物凄く怒っているのだろう、一瞬で桜人の顔は真っ赤になった。 「ご…ごめん、桜人」 歯を食い縛り、口元が歪んでいる。 「ちーが…千隼だけが、好き…」 振り絞って出した声は湿り気を帯びていて、桜人のまんまるな目は涙で一杯になっていた。 「僕だって…桜人が、好き」 僕だけの、桜人。 「ちー…キス、してよ…」 「ん…」 目を閉じてちゅっ、と触れるだけのキスをした。 「今度は上手くいった」 「桜人だって…!」 桜人が、口に齧り付く。 「ン...ッ…!」 唇に歯が当たって背中に電流が走った。 僅かに反応していた僕自身がムクムクとその存在を主張し始める。 舌が唇を割り、歯をこじ開けて侵入した。 桜人が貪るように僕の舌を吸って、甘噛みする。 「あ…ンふ…ぁあ…」 口の中を舐められても、舌を食まれても、何をされても気持ちいい。 荒々しく求めてくる桜人に、僅かながら僕も応えた。

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