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雑貨屋 Les Restes はアクセサリーをメインに各種小物を扱っている店だ。
「Les Restes」とはフランス語で「残り物」。「残り物には福がある」のことわざに引っかけてつけた店名である。
扱うのはアクセサリーの他、カップや器、バッグ、ポーチなどで、自宅での使用、買った本人が満足することを目的とした商品で、なおかつ無理のない価格帯での仕入れを心がけている。デザインはシンプルなもの、遊び心のあるもの等、バラエティに富ませ、ちょっとしたプレゼントに使われることをも意識している。
客は圧倒的に女性が多いが、男性客も少なくはない。
四月の平日、午前十時の開店直後、まだ棚のほこりを払っているような時間帯に、背の高い青年が入ってきた。百八十センチはあるだろう。年は二十歳くらいだろうか。全体に色素が薄く髪も淡い茶だし肌も白い。何より瞳が灰色っぽい。近くにある東坂大学の体育系の学生かもしれない。ブルーグレーのジャージーに白いウィンドブレーカーを羽織っている。
(何だか見覚えがある子だね)
青年は店内をぐるりと見渡して、チョーカーのところへ行った。その品揃えに関して明嗣は他店に負けない自信があった。
チョーカーは単なるおしゃれ用の細いものから、オメガのうなじを守る革製のものまで各種取りそろえている。彼は後者を気にしているようだ。
(プレゼントか? 自分用か?)
明嗣は声を掛けてみることにした。
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