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「チョーカーを探してるの?」
彼が明嗣を見た。灰色だと思った瞳は微かに緑がかってすら見えた。
(この瞳――まさか)
明嗣の頭に閃くものがあったが、まだ確証はもてなかった。
青年は無遠慮に明嗣の全身を見た。
「あんた、やけにチョーカー目立たせる格好してるな。そんなにオメガだと知らせたいのか」
明嗣は自分の服装を改めて見る。
鎖骨丸見えのボートネックのニットは肩から首のラインが完全に見えている。長い髪をやや横で緩く束ね、うなじをしっかり見せた上で、黒いオメガ用の革のチョーカーをしている。そして、店名が胸に入った水浅葱色 のエプロン。
明嗣はずれかけた眼鏡のフレームを上げながら微笑った。
「僕はマネキンだからね」
青年は背後を指で軽く示した。
「チョーカーはあれだけ?」
「奥にもう少し幅の広いものもあるから出してくるよ。試着して似合う幅を選べばいい」
「ふーん」
「自分用? オーダーメードもできるよ。君の瞳のような緑がかったグレーとか」
急に青年は顔をしかめた。
「うるさい」
足音も荒く店を出て行った。まるで逃げ出したようだ。
「またお待ちしてまーす」
早足の背に届くように声を張った。
(色素が薄いのを気にしているのかな?)
(だとするとやはり当たりか)
(また来るといいな)
明嗣はにこにこしながらチョーカーの見せ具合を整え直した。
が、待ち人来たらず。
(気長に待ちますか)
そうして四、五月は過ぎていった。
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