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そして明嗣は上掛けごと秀人を抱きしめ、あることを訊ねた。
なかなか返事が来ないのでしつこく訊ねる。
四度目の問いかけの直前、真っ赤になった秀人が上掛けを剥いで、怒鳴った。
「いいよ! あんたの好きにしろ!」
「ああ、愛してるよ、秀人」
「しつこいっ」
秀人が噛みつくようにキスをしてきた。
「俺も愛してるっ、おしまいっ!」
また上掛けを被ろうとするのを背中から抱きしめる。
「Merci 」
うなじにキスをしようとしたら、両手で隠された。
「アルファに後ろ取られるんじゃなかった」
跳ね起きた秀人は本気で緊張ししているようだ。苦笑が湧いてくる。
「何もしやしないよ。そんな泥棒猫みたいな真似」
「俺は他人の言うことを鵜呑みにはしない」
怒ってにらむ秀人こそ気の立った猫のようだと思いつつ、くすくす笑いながら明嗣はベッドの端に移動した。
「おやすみ」
そう言って目を閉じた。
うとうとした頃、気配に目が覚めた。
目の前には秀人の緑がかった灰色の瞳がある。
「前からなら、抱いてもいい」
そう言う口が尖っている。
明嗣はにっこりすると「仰せのままに」と言って、秀人を胸に抱き寄せてやった。
安心したのだろう、あっという間に秀人は熟睡した。
「Je t'aime 」
すっかり乾いてしまった淡い色の髪にキスを落とした。
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