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第2話

 それから三年。  子を成さなかったティアは屋敷を移された。貰い受けられた先は家格が落ちるためか、ティアの他にΩはいなかった。前の屋敷では当主の次男の相手だけしていれば良かったが、そこでは家中のαの相手をさせられた。  その家の血を繋ぐαさえ産まれれば、ティアを孕ませるのは誰でも良かったらしい。  代わる代わる昼も夜もなく抱かれ続けた。  貴族たちはティアを人間扱いしてくれなかったが、ティアからしても貴族たちはとても人間とは思えなかった。悪魔にとりつかれているとしか思えない貴族たちの仕打ちに、ティアは耐えた。  そして新しい屋敷で迎えた二回目の春。ティアは自らの体の異変を知る。 「……うそ」  変調を来した体。訪れない発情。  それはその身に子を宿したことを表していた。 「逃げなきゃ」  知られてはいけない。彼らの子がその身にいることを知られれば、彼らは狂喜することだろう。そうした後でその子はどうなる?  彼らのヒステリー状態をよく知るが故に、生まれてくる子供に幸せな未来が訪れるとは考えられなかった。  ティアは繋がれているわけでも監禁されているわけでもなかった。懐妊に気づかれる前に逃げなければと考えていたある晩。新たなΩが屋敷に連れてこられた。  漏れ聞こえる声で、発情したΩにαたちが群がっていることを知る。Ωはαの精を求める本能に逆らえないが、αもまた発情したΩの放つ発情の香りから逃れられない。  屋敷の人々が関心を反らした一瞬の隙をついてティアは屋敷を抜け出した。裏の森から月明りを頼りに川に沿って歩く。  歩いて、歩いて、歩いて。  夜明け間際に見つけた教会の陰に倒れこむようにして休んだ。

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