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第4話

「ルカ、それはスミレの花だよ」  散歩の途中で足を止めた子にティアは語り掛ける。ルチアーノの手により洗礼を受けた男の子はすくすくと育った。一歳半を迎え、単語をいくつか話し、たよりない足取りでティアについて回る。  穏やかな日々だった。この教会へ辿り着いた時には考えられなかった、幸せな時間がある。  目に入れても痛くないほど愛しいルカと―― 「るーしゃ……」  通りがかったルチアーノを見つけたルカが満面の笑みを浮かべ、手を伸ばす。抱き上げられルチアーノの腕の中で笑うルカの金色に光る髪は、頬を寄せたルチアーノのものに混じる。同じように輝く髪のせいで、ふたりは遠目に見れば親子のようだった。  ――そんなわけないのに。  長い時間生活を共にしたティアには、ルチアーノの優しい笑顔や穏やかな性格が表向きのものでなく、彼の心根の全てだと知っていた。  神に仕えている人だと分かっていても、ルチアーノを慕う気持ちは勝手に湧き上がってくる。それがただの思慕ではなく、恋する感情だということも分かっていた。  ――そんな贅沢は望めない。  ただルチアーノの傍にいられればいい。ルカと三人で穏やかに日々を暮らせればいい。ティアは、Ωという自分の性を忘れていられるこの日々が続くよう、神に祈りを捧げていた。  どうか、この幸せを取り上げないでください。  朝に晩にティアは祈った。  けれどその願いはあっけなく打ち砕かれることとなる……

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