2 / 64

第2話

もしも時を戻せるなら、過去の自分に言ってやりたい。 その女を連れて、さっさと逃げろ、と。 それは、一夜限りと言う約束でヤった女が俺に付き纏い始めたのが始まりだった。 「ねー、冬夜ぁ、私たち、付き合お?」 「呼び出しくらって何かと思えばそれ?無理なんだけど。じゃあなクソ女」 女が勝手に頼んだコーヒーに手をつけず立ち上がる。 コーヒーなんて苦い飲み物飲めるわけねぇだろ。 いちごみるくにしろよ。 るみ?らみ?なるみ?とか、そんな名前だっけか。 どうでもいい。 名前すら忘れた女と付き合えっかよ。 「ちょ、待ちなさいよ!」 あー、めんどくせえな...。 店から出て路地を歩き始めると、女が追ってきた。 グイッと腕を掴まれ、食い込んだ女の長い爪に思わず顔を顰める。 「付き合いたいの!いいじゃない!」 女のヒステリックな声で頭が痛い。 クソ、こんな女とヤるんじゃなかった。 「あのさあ。俺、一夜限りだって言ったよな?それに、」 近くで俺達の様子をチラチラと見ていた奴の腕を捕まえ、俺の腕を絡ませる。 「今コイツと付き合ってて、ヤることヤってんだよ。分かったらもう近寄んなよ、ブス」 腕を絡めた男は、最初は驚いていたようだが直ぐに女を追っ払ってくれた。 「そういう事みたいだから、さっさとどこか行きなよ。君、みんなからすごい目で見られてるの分からない?」 女が羞恥で真っ赤になる。 言うじゃねえかこの男。 暗いしこの男の背が高いからよく顔は見えないが、優しい声で言うこと言うところ、気が合いそうだ。 そんな事を考えているうちに、女はどこかに逃げていった。 「ふぅ.......」 男の腕を離し、悪かったなと言おうとすると、 「じゃあ、行こっか」 「えっ、?ちょ、はっ?」 その男は俺の腕を掴み、ズンズンと歩き始めた。 「んだよ、おいっ!」 「いいからいいから」 着いたのは、俺がいつも使っているラブホ。 「なっ、なんでっ!待って、おい!」 抵抗しようにも男の力が強すぎる。男はグイグイと俺を連れて、空いている一室に入った。

ともだちにシェアしよう!