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第14話
震える身体で名前を言うと、岬圭一は俺の事をじっと見つめてきた。
ほんと、なんなのお前。
「な、なんなの?俺、携帯返して欲しいだけなんだけど」
「キスだけで気持ちよくなっちゃって、勃たせてるくせに?」
「っ、話を逸らすなっ」
「.......」
睨みつけると、またじっと見つめてくる。
口は笑っているけれど、目の奥ではなにか考え事をしているみたいに笑っていなくて。
「なんだよ」
少しだけたじろぐ。
別に怖くなんかない。
「分かった。返すよ」
「そうだ、返っ、」
「その代わり」
携帯を奪おうとした瞬間、腰を引き寄せられ、椅子に腰掛けている岬圭一に倒れ込んでしまう。
「っ、」
「今日はもう遅いから、冬夜の家まで送るよ」
「離せっ、自分で帰れる」
岬圭一の蜘蛛みてぇにでっかい手が腰に回り、ゆっくりと撫でられる。
ゾクゾクとした感覚に襲われ、身体が震えるがこっちもそうはいかない。
岬圭一の上から降りようと藻掻くと、逆に押さえつけられる。
「だあめ」
「はぁ?なんなの?」
確かに気づけばもう夜だけど。
「一人じゃ危ないよ」
「お前に心配されるほど弱くないっ」
だいたいお前とは昨日知り合った仲だろ!
俺はもう関わりたくないってのに。
「俺にはそうは見えないけどなあ」
「なっ、なんだとっ?」
「だって、こんなに細いし」
「細さは関係ねえ」
腰撫でんな!気持ち悪いっ。
疑うような視線にだんだん腹が立ってくる。
「じゃあこうしようか。俺の腕から逃れられたらそれ以降関わらないよ」
いいこと思いついた!と目をキラキラさせる岬圭一に、呆れる。
「.......分かった」
「ふふふっ」
何を勝ち誇った顔をしてるんだか。
俺の方が上にいるんだから、有利に決まっている。
逆に俺を乗せているから重たくて不利なんじゃねえの?
「ふん、精々頑張るんだな」
そして.......
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