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第15話

岬side 俺から抜け出せたら...と言ってから数十分が経つ。 「んっ、ふぅ!...はぁっ...はぁっ、離せえぇ」 ...まあ、そうなるよね。 俺の腕の中でじたばた暴れている子猫ちゃん、名前は佐々木冬夜というらしい。 「冬夜、そろそろ諦めたら?」 「ううぅー、嫌だっ」 まさに、猫。って感じで、見ていて癒される。 先ほど、冬夜になんなの?お前、と言われて咄嗟に答えられなかった。 自分でも驚いている。 今まで好きな人やら恋人やらはいたけど、こんな執着するような事はなかった。 相手が絶対に勝てない勝負に持ち込んでいくほど、今の俺には余裕がない。 「っくー、ふんっ、くっそぉ!」 「何なんだろうね...」 「...っあ?なんか言ったか?」 「ううん、考え事をしていただけだよ」 「はっ?いい度胸してんなぁおい?...絶対に抜け出してやる!」 ますます頑張って暴れている冬夜に、笑ってしまいそうになる。 俺の腕から抜け出そうと必死だけど、冬夜は殴ったり頭突きしたりしない。 そういう性分なのだろう。 ...女の子とラブホで過ごすのはいただけないけれどね。 よいしょ、とずれ落ちそうだった冬夜の身体を抱え直した。 腰回りは驚く程に華奢で細い。 ...時刻はもう、六時半だ。 再会してからかれこれ一時間が経つ。 いつになったら逃げるのを諦めてくれるのだろうか。

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