15 / 64
第15話
岬side
俺から抜け出せたら...と言ってから数十分が経つ。
「んっ、ふぅ!...はぁっ...はぁっ、離せえぇ」
...まあ、そうなるよね。
俺の腕の中でじたばた暴れている子猫ちゃん、名前は佐々木冬夜というらしい。
「冬夜、そろそろ諦めたら?」
「ううぅー、嫌だっ」
まさに、猫。って感じで、見ていて癒される。
先ほど、冬夜になんなの?お前、と言われて咄嗟に答えられなかった。
自分でも驚いている。
今まで好きな人やら恋人やらはいたけど、こんな執着するような事はなかった。
相手が絶対に勝てない勝負に持ち込んでいくほど、今の俺には余裕がない。
「っくー、ふんっ、くっそぉ!」
「何なんだろうね...」
「...っあ?なんか言ったか?」
「ううん、考え事をしていただけだよ」
「はっ?いい度胸してんなぁおい?...絶対に抜け出してやる!」
ますます頑張って暴れている冬夜に、笑ってしまいそうになる。
俺の腕から抜け出そうと必死だけど、冬夜は殴ったり頭突きしたりしない。
そういう性分なのだろう。
...女の子とラブホで過ごすのはいただけないけれどね。
よいしょ、とずれ落ちそうだった冬夜の身体を抱え直した。
腰回りは驚く程に華奢で細い。
...時刻はもう、六時半だ。
再会してからかれこれ一時間が経つ。
いつになったら逃げるのを諦めてくれるのだろうか。
ともだちにシェアしよう!